2020年 08月 04日
江戸時代末期に造られた連棟長屋の切り離し改修 |
大きな地震が来たらという安全への不安、傾く柱、波打つ床の不快感、暑さ寒さへの体感する住みにくさ、住宅設備機器のリニューアルのし難さ等々、数えあげれば限りない不安、不快、不満が湧き出てきます。もしアイデアによって今の町家を活用してみたいと思ってもらえることがあるとしたら、建築家として色々な提案をすることが出来ます。
ここで解体される運命にあった連棟長屋の切離し改修例をご紹介したいと思います。
京都の街中、江戸時代末期に造られた2軒の連棟長屋。京都にはいまでも多くの連棟長屋が残っています。建物は傾き床は波打ち、不便な水廻り、隣家との音は筒抜け。
2軒にはそれぞれ建物に対する想いと事情は異なります。
・安全、利便性が確保できるなら、町家のイメージを残して手を入れて使いたい。
・連棟を解消したいので、解体もやむを得ない。
・解体せずに連棟を切り離し補強などにより安全と住み易さを確保できるなら、
このまま手を入れて使いたい。
建築家の出番です。
構造補強
連棟の間にスリットを入れ独立した2軒に、各々の構造強度を確保するための現状調査をして、必要な補強箇所を確定し補強。安全への対策は最優先です。この構造上の不安が解消されないことには改修には踏み切れないと思います。提案する一番重要な要素です。また床補強は構造補強も兼ねて行い、それにより波打つ床も解消します。
屋根改修
土ぶきの瓦屋根は重い。
屋根ふき替えの予算があるなら、瓦の下の土をとり、乾式にして軽い建物にします。建物の重量を減らすのは耐震改修上とても重要な要素です。あわせて、デザインとして一部透明瓦を使うとトップライトになり、うなぎの寝床の町家の暗い箇所にも光が差し込みます。
住宅設備機器
住設機器の改修は生活の利便性を大きく変えます。
配置計画を含めた住宅設備の改修提案は住まいをみちがえる様に変えることも可能で建築家の力量の発揮しどころです。
その他床暖房、天井・壁・床への断熱、結露しないサッシ、防犯を考慮した玄関戸、改修したい箇所は多々出てきますが、予算とのバランスをはかります。
かくして解体せずに町家のイメージを残した連棟長屋の切り離し改修が完成しました。
予算
最後に予算の検討は非常に重要です。
改修への希望内容と希望予算とのコストバランスがとれてこその改修です。取り替えるだけでなく、古いものに手を加える、配置を変える、不要なものを減らす等により貴重な財産を生かしながら取り纏めます。
愛着のある古い有用財産の活用、これからますます重要になるのではと思います。思い出を繋ぎ年月を経た芸術的部材を活用し、新しいものと古いものとが織りなす空間は新築とはちがう有為な雰囲気を生み出します。
考え甲斐のある仕事です。
改 修 前
by okazaki_ao
| 2020-08-04 17:05
| 岡﨑建築設計室HP